国 立 科 学 博 物 館

東京・上野公園

日本の生物多様性とその保全

ー生き物たちのバランスの中に生きるー


このGWの期間の特別展は「大哺乳類展(陸の仲間たち)」です。
でもあえて常設展で公開されていた展示を観に行って来ました。

私達が着いた時に特別展のほうは入場まで35分待ちでした。
帰るときには、列はもっと増し60分待ちになってました・・・(^_^;)。




『『 はじめに 』』
私達の暮らしは多様な生物に支えられています。
植物がなければ酸素がなくなり、生きるためには他の植物や動物を食べなければなりません。
また、心に安らぎを与えてくれもします。
生物の多様性を守り、活用していくことは、私達の現在と将来を守ることに繋がります。
そのためには、生き物たちが置かれている状況を知る必要があります。
この展示を通して、日本の生物多様性の現状を知り、私たちとの関係を理解してくださることを願っております。


『『 生物多様性とは・・・ 』』
ああああああああああ≪種レベルの多様性≫     多種多様な生物の生息。ああああああああああああああああああああああ
ああああああああああ≪遺伝子レベルの多様性≫   同じ種でも持っている遺伝子は個体によって異なる。あああああああああ
ああああああああああ≪生態系レベルの多様性≫   数多くの生物が様々な環境でお互いに関係を持ちながら生息している。
この3つの概念が含まれている。


『『 繁殖鳥類の種数 』』
日本で繁殖を行う鳥類の種数は日本野鳥の会の協力によって得られた観察記録に基づくと、
北海道と中部地方以北に高い山が集中していることから、北方ほど鳥類の多様性が高い傾向が見て取れます、
また島地域での多様性は低い傾向にあります。







『『 今は消えた都心の植物 』』
高層ビルが立ち並ぶ現在の23区。
ほんの100年ばかり時代を遡れば、そこには草原や田畑の間に小川が流れるのどかな風景が広がっていました。
いまでは郊外に出かけなければ見ることの出来ない植物や、種の絶滅が危惧されるほど減少してしまった植物が豊富に生育していました。

「サクラソウ」・・・・・板橋区高島平付近
「アギナシ」・・・・・中野区上高田付近
「イバラモ」・・・・・荒川区三河島付近
「ムジナモ」・・・・・江戸川区北小岩付近
                    など。


『『 東京都区部から消えた大型蛾類 』』
里山の雑木林に生息する大型のヤママユガ科やイボタガ科の蛾類は、1950年代から60年代のはじめまでは、
都心部の緑地やその周辺の住宅地にも生息していましたが、現在ではそれらの姿を見ることは出来ません。
かろうじて生き残っているのはサクラ類を幼虫が食べるヤママユガ科のオオミズアオだけで、皇居と赤坂御用地で採集されています。


『『 大気汚染と地衣類 』』
≪地衣類≫   菌類と藻類から構成される共生生物。どちらかのパートナーが影響を受けると、共生バランスが崩れて枯死してしまう。

ヒトリガ科のコケガ類の幼虫は地衣類や藍藻類を食べ、山地や平地部のどこにでも多数発生しています。
ところが、1960年代から70年代、都区部では深刻な大気汚染により地衣類や藍藻類の多くが枯死し、コケガ類は完全に消滅したものと推定できます。
しかし、2000年前後には都心部の緑地でコケガ類が再び採れはじめました。

高度成長期には亜硫酸ガスの影響のため、各地の都市部からウメノキゴケが消失してしまいました。
工場への脱硫装置の設置などによって亜硫酸ガスの汚染が改善されると、ウメノキゴケは回復してきました。
その一方、幹線道路で交通量が増加するに伴って、ウメノキゴケの消失地域は道路に沿って拡大していきました。


『『 生物多様性の減少の実態 』』
経済成長が優先された高度成長時代には公害問題が発生し、都市開発が猛烈な速度で進みました。
多くの河川がどぶ川になり、干潟や砂浜などの自然海岸が失われました。
このため多くの生き物の住みかがなくなりました。
一方、シカが増えすぎて植物が壊滅的な被害を受けるという事態も生じています。
生物多様性の減少は人の活動によって、自然界のバランスが崩れて生じることが多いのです。





『『 藻場・干潟は海のゆりかご 』』
沿岸域は、高い生物生産力と多様な生物に恵まれた重要な海域です。
そこには藻場や干潟が形成され、魚介類の産卵場、稚仔の生育場所、餌場や休息場所となるうえ、水質浄化の役割も果たします。
しかし沿岸域は、開発や産業、私たちの生活の影響を受けやすく、各地で藻場や干潟が著しく減少しています。


『『 夏鳥の減少 』』
日本で繁殖し東南アジアなど南方で越冬する渡り鳥を夏鳥と呼びます。
夏鳥の多くが1980年〜90年代頃に日本各地で姿を消していきました。 
それは東南アジアで森林が大規模に伐採された時期と重なります。
また、減少の原因として、地球温暖化によって渡り時期と繁殖時期を調整することが難しくなっている可能性も指摘されています。
夏鳥の減少からわかるのは、ローカルな生物の多様性がグローバルな結びつきの上に成り立っているということです。

≪長野県野辺山におけるアカモズの減少≫
1997年8月にインドネシアのボルネオ熱帯林でエルニーニョを起因とした大火災が起こった。
ボルネオはアカモズの主要な越冬地であったため翌年野辺山にきた個体数はそれまでの3分の1に激減した。


       減少傾向にある夏鳥6種の年代別の変化              縦は出現率(%)


『『 シカが食い尽くす日本の植物 』』
シカ(ニホンジカ)の増加が日本の植物にとっての脅威をなっています。
個体数が増えたシカは、各地で分布を拡大し、ありとあらゆる植物を食い尽くしています。
農家は農作物への被害を防ぐため電気柵を仕掛けるなど対策に躍起になっていますが、
野生の植物を全て柵で囲むわけにはいきません。
なぜ近年シカが急速に増えたのか、その要因は諸説がありますが、
元をたどれば人間が生態系のバランスを崩してしまったことは明らかです。

≪シカによって絶滅寸前の植物≫
ヤクシマタニイヌワラビは鹿児島県屋久島に固有のシダ植物で、30年ほど前まで島内ではいたって普通の林床植物でした。
近年、ヤクシカ(ニホンジカの亜種)の増加に伴って、屋久島の林床性シダ植物は壊滅的打撃を受けています。
本種も絶滅危惧種として注意が払われるようになった時には、大型個体が全く見られない程にまで減少してしまっていたのです。
最近試験的に設置された保護柵ないでは、大型の葉を展開させるのが確認されています。
保護柵外では葉が成長してもすぐにヤクシカに採食されてしまい、大型の葉は見られない。
今すぐ対策を講じれば、絶滅を回避できる可能性がまだ残されています。


『『 生物多様性を守る方法 』』
生物多様性を守る方法として、自生地で守るやり方(生息域内保全)と施設などで守るやり方(生息域外保全)の2つがあります。
両者にはそれぞれ長所と短所があるため、2つの方法を組み合わせて生物多様性を守ることが必要です。

≪野生のままで  生息域内保全≫
メリット・・・・・・生態系をありのままで残すことができる。ああああああああああああ
ああああああああああ進化がストップしない。ああああああああああああああああああああ

デメリット・・・・・守ることのできる種の数が限られる。ああああああああああああああ
ああああああああああ1種の遺伝的多様性を守るためには複数の場所の広大な面積が必要。
ああああああああああ生態系の一部が欠けている場合、機能しない。ああああああああああ

≪施設の中で  生息域外保全≫
メリット・・・・・・効率的にたくさんの種を保存することができる。あああああああああ
ああああああああああ天災や人災から守ることができる。あああああああああああああああ

デメリット・・・・・生態系を残すことができない。あああああああああああああああああ
ああああああああああ栽培の難しい生物は保護できない。あああああああああああああああ
ああああああああああ進化がストップする。あああああああああああああああああああああ


『『 生育域外保全   ラン科を守る 』』
ラン科は植物の中でもっとも多くの種を含む科で、約25000種が知られています。
これまでに約5000種が絶滅した可能性が指摘されるなど、環境の変化にたいへん弱い性質を持ちます。
したがってラン科は、優先して保全を進める必要性の高い生物のひとつです。
国立科学博物館筑波実験植物園は、アジアのラン科の研究と保全の拠点として、約3000種のラン科を生息域外保全しています。


『『 生息域内保全   アホウドリ』』
アホウドリは一度絶滅の淵に立ちながら、様々な保護努力の結果、生息域内において奇跡的ともいえる復活の過程にある大型の海鳥です。
19世紀末から20世紀前半にかけて羽毛採取を目的として数百万羽が濫獲され、1949年には絶滅したと思われていました。
しかし1951年に鳥島の燕崎で10羽ほどが再発見され、その後様々な保護対策がとられて現在2000羽を越えるまでに回復しています。
デコイと呼ばれる模型が安全な繁殖地の創設や分散に役立ってきました。

≪鳥島南東部に急斜面の繁殖地(燕崎)≫
再発見以降、鳥島の繁殖地は危険な急斜面に限られていた。
土砂流入が卵やヒナの主な死亡要因になっていたことから、1981年以降砂防工事と草の植栽を行った結果、改善が図られてきた。

≪西側の緩斜面(初寝崎)での繁殖地の新設≫
安全な緩斜面に新たな繁殖地を作るため、1992年から初寝崎にデコイを多数設置してアホウドリの声を流し、集団繁殖地の雰囲気を作りだした。
結果、若いアホウドリのつがいの誘引に成功し、新繁殖地ができあがった。

≪小笠原諸島聟島へのヒナの移送と繁殖地のさらなる復元≫
鳥島は噴火の危険があるため、2008年から聟島へのヒナの移送が行われている。
ヒナの移送地には若いアホウドリの飛来も見られるようになっており、小笠原でも繁殖地の復元が実現する可能性が高まっている。


『『 生息域内保全と生息域外保全の統合   コシガヤホシクサの野生復帰』』
コシガヤホシクサは、1994年に唯一の自生地(茨城県下妻市砂沼)で水管理方法が変わったために消滅し、現在は植物園などでのみ保存されている野生絶滅種です。
国立科学博物館筑波実験植物園は2008年から環境省と共に、コシガヤホシクサを野生復帰させるための保全研究プロジェクトを開始しました。
2008年秋に絶滅以前の水管理に戻すことで関係者(所有管理者・利用者・自治体)が合意し、保存種子を用いて砂沼での発芽・生育試験を行いました。
その結果、2009年春に発芽に成功し、秋には花が咲き、種子も実り、野生復帰の第一段階をクリアしました。
野生絶滅種の野生復帰には、生息域外保全された個体が不可欠である。



『『 生物多様性保全のシンボルとしてのトキ 』』
トキは日本の生物多様性保全のシンボル的な存在として、豊かな山とゆたかな水辺・水田からなる景観を持つ環境で野生復帰が進められています。
トキが野外で繁殖するためには、餌となる水棲植物がたくさんいる豊かな水辺や水田が必要で、また営巣木となる大木がある豊かな森も必要です。
このような生物多様性が高い環境を守り、整備することが、私たちの生活の質を高め、持続可能な発展につながると認識されるようになってきました。



≪日本のトキと中国のトキは違う?≫
現在飼育下で順調に増え、佐渡で放鳥されているのは中国産のトキである。
日本産のトキは2003年に最後の一羽が死に絶滅した。
「日本産」「中国産」といっても分類学的には分けられず、ミトコンドリアDNAでも違いがないことが分かっている。
トキは19世紀以前に東アジアの広い範囲に分布し、全体が交流のある一つの集団を形成していたと思われるので、
「日本産」「中国産」を区別することには、あまり意味がない。


資料:企画展 日本の生物多様性とその保全 配布パンフレットよりあああ



2010年5月2日(日)   場 所  国立科学博物館 あああ  



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