==========充実した『きのこ取り』==========


それは釣りのシーズンも終わりを告げ、山もそろそろ寒くなってこようという
10月の第一土曜のことであった。

まさに『きのこ』シーズン到来!!!
うまくいけば『舞茸』なんぞ見つかるかも知れない・・・と
取らぬ狸の皮算用満々で出かけた3人(師匠・モグラ・子モグラ)であった。
3人で一度行ったことのある山。
釣りの時などは人と出会うことなどほとんどないにも関わらず、今回はよくすれ違う。
『きのこ銀座』と言われる所以だ。。

見かける車は、『千葉』ナンバー、『新潟』ナンバー。
「わざわざ千葉くんだりから、こんな山奥まで来るんじゃないよ〜。」っと文句を言っているモグラの車は『足立』ナンバー(自爆)
子モグラは気持ちよさそうに寝ている。
少し明るくなってきたので、3人は出発することにした。


師匠は一人、目をつけていた場所を探索。
モグラと子モグラは斜面を降りたところで、探索。
「もっとそっち探してみる〜?」「あまり離れると迷子になるかもよ」
などと話しながら、師匠の帰りを待つ。
「すぎひらたけがあったよ」「よしゲットだ」
二人は唯一知っている『すぎひらたけ』を楽しそうに採っている。

師匠が大きな袋をぶら下げて戻ってきた。
「もしや・・・舞茸???」
「いや、違う。でもりっぱな株なので取ってきた」
早速車まで戻り、本と見比べるが、いまいち決め手に欠ける。
「う〜〜〜ん」
「どれだった???」
「う〜〜〜ん、似てるけどな〜〜〜、こっちかな〜?それともこっちかな〜〜〜?」
判断がつかないようだ。
(どうか食べられるきのこでありますように・・・。)っとモグラは密かに願っていた。

ひとまず場所を移動。のんびり移動しながら次の目的地を・・・考える(爆)
きのこ採りは釣りと違って時間があまり関係ない。

次の目的地についた。
「おにぎりどうします?」
「いや、そんなに長い時間はいないだろうから、持たなくていいよ」
沢に下りる途中から横へと歩いて探す。
結構歩いたが、ここはまったくと言っていいほどきのこがない。
どんな種類のきのこも見えないのだ。
仕方なく3人は高巻いて帰ることにした。緩い斜面を木を掴み、草を掴み一歩づつ確実に・・・。


っと、目の前に大きな岩を積んだような崖が・・・。
「ここは無理そうだな。引き返すか」
「ここを私が登れれば、チビも登れるでしょう。やってみますよ」
っと、なぜか強気のモグラが登ることを主張。
「よし、やってみろ」 モグラは登り始めた。登りだすと意外と登りずらい。
掴む物が無い場所や、コケで岩が滑るところがある。
それでも強引に登ってしまった。
「その上はどうなってる?」
師匠の問いかけにモグラは見える範囲を伝える。「草も生えているし、進めると思います」
師匠に補佐されて子モグラも登ってきた。
途中の難関は膝を使い、師匠に支えられて登る。っと手を離した。
師匠が下から押さえていたので無事だったが、一歩間違えれば、大怪我だ。当然師匠の渇が入る。

だが3人の登っている場所はまだ崖の中腹、ようはF1だった。
その先にもまだ崖(F2)はあるし、その先にはトラバースしながら登らなくてはならない急な斜面が待っていた。
そんなこととは知らない師匠は子モグラを支えながら、なんとかF1を登りきった。
「この先は?」
見るとかなりきつそうな予感がする。しかし振り返ってここを降りるのはしんどそうだ。
「しょうがない、左にトラバースしながら、向こうの斜面に出よう。」
3人で木を掴みながら、何とか左の斜面の緩やかなところに移動した。
ここで第2の崖。F2が現れた。
「ここはどうします?登ります?」
「そうだな、ここを登ればもう下りになるかな?」
3人はまた滑りそうな崖を登った。
だがその先にあったのはさらに上へと続く急な斜面。しかも藪漕ぎをしなければならないほど木が、草が生えている。
「おかしいなぁ?そんなに高い山ではないのに」
師匠がつぶやく。子モグラは段々不安な表情になってきた。
「おかぁ、帰れるかな〜?」半分泣きが入っている。
「帰れるかな?じゃなくて帰るんだよ。自分で帰らないで誰が帰してくれるの?」
「うん・・・。」まだ声が震えている。
「子モグラ、自分で自分を支えないと、誰も助けてくれないよ。
さっきみたいに手を離したり、今みたいに泣き言を言ったりしてたらだめなんだよ。
絶対にあきらめちゃだめなんだよ。おじさんは手助けはするけど、あくまで子モグラの力で帰るんだから、
子モグラが力を全部出してくれないとおじさんだって手助けできないよ。」
師匠の説得で子モグラも何かを感じたようだった。

「この下を見てくる」
師匠一人ならなんとか降りられる崖ではある。しかし・・・。
子モグラやモグラでは危険である。運悪く今回はハーネスもザイルも持ってきてはいない。
変わりになるものといえば・・・腰に巻いたタイヤのチューブだけ。
「やめよう。ここを降りるには危険すぎる。さっきの十字路まで戻り、そこで少し休憩しよう。」
3人はきた道・・・斜面をまた慎重に戻っていった。

子モグラの動きが変わった。さっきまでの腰の引けた動きとは異なり、手にもしっかり力が入っている。
師匠の説得の効果だ。モグラは安心した。
自分に不安は無かったが、子モグラがしっかりしてくれないといくら師匠がいても補佐しきれないからだ。

休憩では軽い冗談なんかも飛び交い緊張した空気が少し和んだ。
「おにぎり持ってくればよかったな〜」 などと暢気なことをモグラは考えていた。
「さてこれからどうするかだ。来た道を戻ることにする。ただし降りやすいところを見つけながら進もう。」
「さっきのななかまどの花のところまで行こう。」
それぞれが新たな目標に向かって、歩きだした。
ななかまどのあったところはわかっている。そこまでより通りやすいところを見つけながら進む。

F2に出た。ここは崖の移動はせずに左の斜面の草を頼りに降りた。

そして最後の難関F1に着いた。
ここでは師匠が先に降り、子モグラを支える体制をとった。
モグラは上の斜面で草を掴みながら、待った。っと、そのときスズメバチが3人の周りに飛んできた。
「近くに巣があるのかもしれない、これは警告だ」モグラは心の中でそう思っていた。
スズメバチは行ったり来たりしながら、羽音をモグラに当てつけるように聞かせる。
「すぐいなくなるから・・・貴方の巣をどうこうしようという気はないから・・・もう少し待ってて」
しかし子モグラが下に着くまで、モグラは動けない。
スズメバチは子モグラのほうにも飛んでいく。子モグラがビックリして手を離したりしたら大変だ。
「お願い、何もしないから、いなくなって!!!」

やっと子モグラが地面について師匠から降りてこいとの合図がきた。
モグラは慎重に且つなるべく早く降りた。

やっと下に降りられた3人は大休止を取った。
「怖かったね」っと子モグラ。
「そう?でもハーネスなしでできたじゃん。」っとモグラ。
「それより。蜂怖くなかった?」
「蜂???いたの?気づかなかった」
「・・・(それほど集中してたんだ、まっ、いっか)」
「はぁ、疲れた。なんとか無事に降りられたな。」っと師匠。
疲れていてもモグラと子モグラの顔にはやり遂げた達成感と満足感が浮かんでいた。
そして師匠の顔にも安堵の色が浮かんでいた。
その後の藪漕ぎも結構長い距離だったが、3人ともさほど感じてはいないようだった。

やっと車道に出た。久しぶりに踏んだ平らな地面だ。 後は車止めまで歩けばよい。
「あれ?こっちの方向でいいんだよな」師匠が山を見ながら迷っている。
「こっちでいいんだよ。あの小屋、車の中から見たもん」子モグラ。
「本当?あんな小屋どこにでもあるんじゃない?第一あんた寝てたじゃない。」モグラ。
「だって、目が覚めたときに外見たら、あの小屋があって、ドアのところに『火の用心』って書いてあったよ」子モグラ。
2人は半信半疑で小屋のところまで、歩きドアを見た。
はたして・・・・・あった。『火の用心』。
「えらい、子モグラ!!!」2人は声をそろえて言いました。照れる子モグラ。
子モグラの観察力と記憶力のおかげで無事車止めまで帰ってこられました。

帰り道、車の中から山を見る・・・ななかまどはとても高いところにありました。
「あそこまで登ったの〜〜〜???」モグラと子モグラは驚愕の声をあげました。
が、言葉とは裏腹に2人の顔には不敵な笑みが浮かんでいました。
とても怖い思いをしたけれど、とても充実した達成感を味わったきのこ採りでした。
教訓として・・・山に行くときは最低でもザイル1本は持って行きましょう。


本日の収穫品・・・           



追記・・・師匠のビニールの中味は・・・?



2007年10月6日(土)   場所  福島の山   参加者  師匠  子モグラ  モグラ



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